大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)4495号 判決

被告人 生駒隆一

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点について。

刑事訴訟法第三百十条によれば「証拠調を終つた証拠書類又は証拠物は遅滞なくこれを裁判所に提出しなければならない。但し裁判所の許可を得たときは原本に代えその謄本を提出することができる」ことになつていることは所論の如くであるが、右の証拠書類又は証拠物の謄本の提出の許可についての裁判所の決定は公判調書の必要的記載事項ではないのであるから(刑訴規則第四十四条第三十号ト)本件原審第一囘公判調書には所論の如き記載があるのに訴訟記録には百瀬豊善の検事に対する第五囘供述調書の謄本が編綴されておるからとて、この一事から直ちに所論の如く該供述調書の原本につき適式の証拠調が行われなかつたものと断定すべきではない。また前記刑事訴訟法第三百十条の書証の謄本の提出の許可の請求の如きも因より公判調書の必要的記載事項には属しないものと解すべきであるから原審第一回公判調書に検察官が右供述調書の謄本の提出の許可の請求の記載がないからとて検察官はこれが謄本の提出の許可を請求しなかつたものであると断定することもできない。むしろかくの如き公判手続において一般的に当然行われる事項であつて特に公判調書の必要的記載事項とされていない訴訟手続については適式に履践されたものと解するのが当然である。ひるがえつて本件訴訟記録を精査するも前記供述調書の原本について証拠調がなされなかつたと疑うべき点はすこしもなく、また検察官が裁判所の許可を得ないで右供述調書の原本に代えて謄本を提出したものであると疑うべき点も存しない。従つて原審公判調書に敍上の点が記載されておらないからとて前記供述調書の原本について適式の証拠調が行われなかつたものであるとか、右供述調書の謄本の提出について裁判所の許可を得ておらなかつたものであると主張する所論は採用できない。それゆえ論旨は理由がない。

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